顔中うみだらけ Vol.2

 3ケ月に入ったある日、朝起きて莉帆の顔を見ると顔中カパカパになったうみと血だらけです。びっくりして主人を起こしました。2人でどうしたらいいか分からず呆然としてしまいました。

とりあえず、きれいにしてあげなければと思い、お湯をくんできてガーゼでふきとろうとしましたが夜の間にパジャマの袖で顔をこすっているので、服の繊維とうみが固まってしまいなかなかとれません。痛いのでしょう、莉帆はものすごい勢いで泣いていました。


 この日を境にこの作業が朝の日課になりました。泣きじゃくる莉帆の顔をふいてあげるのは、一日で一番辛い作業でした。でも、そのままで放っておくこともできません。昼間もティッシュを片手に顔をおさえてあげるのですが、ふいたそばからうみはふきだしてきます。莉帆も気分が悪いのでしょう、一日中泣いていた日もありました。


 たまらず皮膚科に行きました。一目見るなり『乳児湿疹ですね、きれいに治りますよ』とお薬を顔にぬって頂きました。これと同じ薬を顔に、体には別の薬を出しますからと言われ帰ってきました。

私は、なるべく薬は使いたくなかったので、その日はもうぬってもらったからと思い使いませんでした。


 次の日起きてみると莉帆の顔は嘘のようにきれいでした。これはステロイド剤だと直感しました。でも、主人は大喜びです。こんなにきれいになるんだったら早く病院に行けばよかったなと上機嫌です。でも私はこれはきつい薬だから使いたくないと言い2人で話し合い、体につける薬を顔にぬるということになりました。


 それでもやっぱり薬を使いたくない私はアトピーのことについて勉強しました。現在の医療では特効薬はないこと、ステロイドで症状を抑えることしかないこと、薬にたよっていると慢性化し手放せなくなること、副作用で皮膚が薄くなったり黒ずんだりすることを知りました。

私はこのことを主人に話し、どうしても薬は使いたくないと言いました。私のあまりにも頑固な姿に根負けしたのでしょうか、他の方法で治してあげようと言ってくれた時は感謝の気持ちでいっぱいでした。


 薬をやめたとたん莉帆の顔は、また真っ赤で湿疹だらけの顔になりました。顔だけでなく次第に腕、お腹、足とだんだん広がっていきました。

 顔も体もうみでぐちゃぐちゃです。授乳のたびに顔や体をふいてあげないといけません。莉帆もかゆいので何とかしてかこうとして私の服に顔をこすりつけてきます。セーターを着ていると顔が毛糸だらけになってしまったのでこの冬はセーターを着れないと早々にしまってしまいました。

毎日、莉帆が顔をかかないように見張っているのはとても大変でした。気分が悪いためかお昼寝もほとんどしてくれません。夕方になると昼間寝ていないため輪をかけて機嫌が悪くなります。夕食の用意も一苦労でした。

主人も『帰ってきて寝るまでほとんど泣いている自分の娘に会うのが本当に辛かった、会社から帰ってきたくなかった』と言っていました。どうして自分の子供だけがこんな事に・・・とお互い口に出さないながらも思いは同じでした。







 夜も寝てくれない日がたびたび訪れます。夜中に泣きまくる莉帆は私がだっこしてあげると安心するのかおとなしく寝ています。もういいかなと布団におろすとまた泣き出す、この繰り返しでした。私も莉帆もゆっくり眠れなくてくたくたです。その横ですやすや寝ている主人を、この時ばかりは蹴飛ばしてやりたいと思いました。


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